薬剤師の効果的な勉強方法は?おすすめの本やアプリを紹介
目次
序文
薬剤師として仕事をするには、自己研鑽が大切です。医療は常に進歩していますし、正確な知識を更新していかなければ、新薬を扱ったり患者さんに適切なアドバイスをしたりできません。ところが働きはじめると仕事やプライベートが忙しく、勉強時間がとりづらいということも。少ない時間の中でどのように勉強していけば良いのでしょうか?ここでは、薬剤師のスキルアップ方法や効率的な勉強法をお伝えします。
病院・薬局などで働く薬剤師のスキルアップに最適な勉強方法
いくら勉強が必要だからといって、学生時代のように教科書を1から勉強していくのは非効率です。専門職の仕事は学ぶことが多いので、短期間にすべてを勉強しなおそうとしても何から手をつけて良いかわからなくなるでしょう。薬剤師が効率的にスキルアップを図る方法は、主に3つあります。
① 業務で学んだことを「マイノート」に整理する
日々の業務で学んだことを知識として身につけるには、「マイノート」を作成し情報を整理するのがおすすめです。薬剤師と一口に言っても勤務先によって学ぶべき事柄は違ってきますから、これまで身につけてきた知識が仕事に役立たないこともあるでしょう。職場が違うと取り扱う薬が変わったり、患者対応に必要な事務手続きの方法が変わったりするので、薬剤師はいまの勤務先に必要な知識を身につけていくことが必要になります。そこで仕事がおこないやすくなるようには、学んだことをノートに整理しながら今の業務に必要な知識を身につけていくのです。ある調査では、調剤薬局に勤務する若手薬剤師の85%以上の方が業務用のメモやノートを作成していました。例えば新しい薬の知識、薬の留意事項、小児薬用量、勤務先の機械やパソコンの使い方など仕事で学んだことを「マイノート」に整理しておけば、必要な時に内容を参考にしながら業務を行なうことができます。逆に日々の業務を振り返らないと、学んだことが自分の知識として蓄積しづらいので、いつも先輩や同僚に質問したり同じトラブルをくり返したりすることにもなりかねません。ですから、できるだけ業務で学んだことは「マイノート」に整理してその日のうちに知識として蓄積させることが大切です。
② 最新の治療方法や法制度について理解を深める
薬剤師として働くには、最新の治療方法や法制度の知識の更新が必要です。診療報酬は2年に1度改定されますから、情報を更新しないとこれまでの知識が全く通用しないということも。病院や調剤薬局では患者さんから保険点数や薬価について質問を受けることも多いので、薬の説明をするには最新の情報が欠かせません。ドラッグストアでも、新しいOTC医薬品が発売された場合には作用・副作用を学ぶことが大切です。正しい薬の知識を身につけることはもちろんですが、信頼される薬剤師になるためには、正確な情報提供ができるようになる必要があるでしょう。最新の治療方法や法制度について理解を深めたい時には、薬剤師向けのウェブサイトやアプリなどのツールが便利です。これらのツールは仕事やプライベートが忙しい時期でも隙間時間に利用することができますし、定期的にチェックすることで最新の情報が確認できます。例えば、公益財団法人 日本薬剤師会のウェブサイトでは、新薬の薬価情報などを閲覧することができます。他にも最新の医療ニュースや治療法などが閲覧できるアプリなどもあるので、仕事や家事の合間・通勤時間などに使ってみてはいかがでしょうか。
③薬剤師業務の基礎を復習する
また、仕事では薬剤師の基本的な知識や技術も外せません。薬剤師として医療サービスを提供したり患者さんに服薬指導したりするには、業務に必要な最低限のスキルを身につけておく必要があります。ほかの医療従事者や患者さんからすると、経験年数に関わらず薬剤師は「薬の専門家」です。そのため、基本的な業務をおこなえなければ専門家としての信頼を失ってしまう可能性もあります。例えば、病院や調剤薬局では調剤の仕方・薬歴の管理の方法などがわからないと、基本的な薬剤師業務がおこなえません。ドラッグストアでは、OTC医薬品の説明や服薬指導などができなければ薬剤師に求められる顧客対応ができないでしょう。このように、勤務先で必要とされる基本的な業務を学ぶこともスキルアップには重要です。では薬剤師業務の基礎を復習するにはどのようにすれば良いのかというと、おすすめは職場の実務に合わせた書籍を参考にすることです。専門書籍には薬剤師業務のスタンダードなやり方が紹介されているので、書籍を使って勉強することで基礎的なスキルを身につけることができます。新人薬剤師や看護師向けの書籍には、処方箋の読み方や調剤の方法などがわかりやすく解説されています。顧客対応について学ぶには、一般企業向けの接客・接遇の書籍も参考になるでしょう。まずはスタンダードな方法を学びながら、職場の実務に合わせて自分なりの仕事のやり方を確立していきたいものです。
新人薬剤師必見!先輩薬剤師に学ぶノートの取り方
業務で学んだことを身につけるには「マイノート」の作成が大切と説明しましたが、新人薬剤師のなかには、先輩がどのようにノートを整理しているか気になっている人も多いはず。そこで、ノートの取り方についてポイントを紹介します。
①職場で開きやすいノートを使う
ノートにはさまざまな種類がありますが、特に自分の職場で開きやすいノートを使うことが重要です。労働環境によっては大きいノートを開くスペースがないですし、小さすぎるノートでは瞬時に欲しい情報を見つけられないかもしれません。ですから、職場の労働環境に合わせて情報を探しやすいノートを選ぶようにしましょう。また、ノートに書き込む情報量が多い職場の場合にはルーズリーフを使うのもおすすめです。ルーズリーフであれば情報を付け足したり、必要なページだけ持ち歩いたりできるので、仕事のスタイルに合わせて自由度の高い使い方ができます。ルーズリーフも手帳サイズの商品が販売されているので、小さなものを使うと調剤室や売り場などの場所でも使いやすいでしょう。
② 早引きできるようにインデックスや付箋でブックマーク!
薬剤師は、業務中にノートを見る時間が少ないです。調剤や接客・販売など、職場では効率的に業務をこなしたり顧客対応をしたりする働き方が求められるので、限られた時間のなかで必要な情報を探し出さなければなりません。そこで、ノートにはインデックスや付箋を貼って、どこにどのような情報を整理したか見直しやすくしておくことが大切です。見直しにくいノートは学んだことを整理した満足感は得られますが、残念ながら仕事では活用しづらいでしょう。また、同じ理由から見やすいノートを作るには色を多用しないこともポイントです。色を多用すると、一見キレイに見えますが仕事に必要な情報が探しづらくなります。活用しやすいノートをつくるには、色は黒・青・赤の三色におさえることをおすすめします。
③数値やデータは参考書のコピーを貼りつける
参考書に掲載された数値やデータは、コピーをしてノートにそのまま貼り付けるようにしましょう。数値やデータは、自分の使うノートに合わせて縮小コピーしておくと立ち仕事をしている時にも確認しやすくなります。小児薬用量やステロイド剤のランク表など。自分が業務で頻回に確認するものは参考書のコピーのほうが見やすいですし、コピーを貼り付ければノートにメモする時間も省くことができるでしょう。また、勤務先によっては職場特有の略語や隠語などを使わなければいけないケースもあるかもしれません。医師が使う病名や治療・検査用語などは略語で記載されていることが多いですが、残念ながらすべての用語を記憶するのは難しいです。それから医療・福祉従事者と連携する機会が多い薬剤師の場合には、それぞれの職種が使う専門用語を知っておく必要もあります。このように薬剤師には仕事で知っておくべき数値やデータ・用語が多いので、専用のページを作っておくと業務中にもノートを活用しやすくなります。
仕事復帰に向けて!ブランクがある場合の勉強方法
ママさん薬剤師には、仕事復帰に向けた悩みがつきものです。ブランク期間があると知識や仕事感を忘れてしまうので、うまく仕事を再開できるか不安になるでしょう。ここからは、ブランクがあるママさん薬剤師が仕事復帰するための勉強方法を紹介します。
①情報誌や参考書をチェックする
薬剤師向けの情報誌では、日常業務やスキルアップ・業界の動向などを学ぶことができます。なかでも「日経DI」や「薬事日報(メールニュース)」は無料で利用することができ、多くの薬剤師が自己研鑽に活用しています。例えば、OTC医薬品ひとつとっても平成26年6月12日に制度が改正され、第一類医薬品の一部が要指導医薬品に新しく分類されました。このような保険制度や法律の改正も情報誌を活用すると簡単にチェックすることができるので、うまく情報誌を活用しながら最新の情報を正確に理解しながら働けると良いでしょう。また、ブランク期間中に忘れた知識は参考書で復習しておくことも大切です。ただし、ママさん薬剤師は仕事やプライベートで日々の生活が忙しくなりがちです。ですから、参考書で1から勉強し直すのではなく、職場の業務で必要になる内容からピンポイントで復習するようにしましょう。
②薬剤師会の復職支援プログラムを利用する
各都道府県の薬剤師会では、結婚や子育て・介護などでブランクのある薬剤師向けに復職支援プログラムをおこなっています。薬剤師会の復職支援プログラムを利用すると、病院や薬局などで働く現役の薬剤師から仕事についてアドバイスをもらうことができるので、一人で勉強するよりも仕事復帰の準備がおこないやすくなるでしょう。例えば宮城県薬剤師会では、未就業薬剤師向けに10日間にわたる復職支援プログラムを用意しています。こちらのプログラムでは、調剤や疑義照会の方法といった業務内容の講習を受けることが可能です。長崎県薬剤師会の復職支援プログラム(5日間)では、調剤業務に加えて最近の医薬品情報などについても研修で教えてくれます。このように各都道府県の薬剤師会では、ブランクのある薬剤師向けの研修会をおこなっているので、復職支援プログラムについて詳しく知りたい方は、お住まいや勤務地がある都道府県薬剤師会のホームページを検索してみてはいかがでしょうか。
③職場の研修制度を利用する
仕事復帰に自信がないママさん薬剤師には、研修制度が充実した職場を転職先に選ぶのもおすすめです。というのも、企業がおこなう職場内研修では、現場の業務で必要な知識を現職員から直接教わることができるからです。研修制度が充実した職場では、OJT-On the-Job Training-(先輩職員が実務を通して業務を指導する)やOFF JT-Off the Job Training-(職場研修会などを通じて業務を指導する)が盛んにおこなわれています。最近では、インターネットを使って業務を学習できるe-ラーニング研修を導入する病院や薬局も増えてきました。e-ラーニングであれば家事や育児の隙間時間を使って受講することができるので、少ない時間を有効活用しながら仕事復帰のための学習がしやすいです。
薬剤師の勉強におすすめの本や参考書
仕事の勉強をする時には、できるだけ新しい教材を使いたいものです。なぜなら医療業界は変化が早いので、数年前の教材では掲載された情報が古くなってしまっていることも多いからです。そこで、近年発売されたなかで薬剤師の勉強におすすめの本や参考書を紹介しましょう。
①調剤薬局の薬剤師のバイブル!「薬局で使える実践薬学」
「薬局で使える実践薬学」では、調剤薬局で扱う薬の作用や副作用について理論的に理解できます。この本では、処方監査や服薬指導などの業務で必要となる薬理学や薬物動態学の知識がわかりやすく解説されています。なぜその薬を服用する必要があるのか?ほかの薬と併用してはいけないのか?など。薬理学や薬物動態学に基づいた薬の作用・副作用を正確に理解できると、患者さんにも適切な服薬指導ができるようになるでしょう。本の構成は月1回の勉強会形式になっており、若手薬剤師として研修に参加するイメージで読み進めることができるのもポイントです。
②病院薬剤師必見!「薬が見えるシリーズ」
「薬が見える」は全3冊のシリーズとして出版されており、薬剤師に限らず医師や医学生・看護師などにも人気のある参考書です。最大の特徴は、オールカラーデザインで見やすいこと。薬の作用機序はもちろんのこと、各疾患の特徴や症状についても解説されているので、病気と治療薬の関係性が理解しやすいでしょう。神経・循環器・免疫・消化器疾患や悪性腫瘍など、vol.1~3を合わせると病院の治療で関わる代表的な病気が網羅されています。病気と治療の知識がしっかりと身につけることができるので、薬の専門家として医師やほかの医療従事者とのチーム連携がしやすくなることも期待されます。
③小児科門前薬局に勤務する薬剤師には「実践 小児薬用量ガイド 第3版」がおすすめ!
「実践 小児用量ガイド 第3版」は、小児科の医療機関から処方を多く受ける薬剤師におすすめの本です。この本は薬剤名・小児薬用量・作用などがまとめられており、患児の体重や年齢に合わせた処方や監査がおこないやすい参考書となっています。小児の場合、大人と違って薬の服用量が一律に決められていないため、薬剤師は患児のからだに合わせて薬の服用量を調節しなければなりません。特に小児科門前薬局では、日々の業務のなかで薬を小児薬用量に接する機会が多くなりますから、本書があるとスムーズに調剤業務がおこえます。
④ドラッグストアの薬剤師に不可欠!「OTC医薬品の比較と使い分け」
ドラッグストアでは、薬剤師はOTC医薬品を取り扱う機会が多くなります。ドラッグストアでも、薬剤師は薬の専門家としてお客さんの質問にわかりやすく答えなければなりませんが、数多くある類似商品の中からどのOTC医薬品を選んで良いのか悩むものです。そこで参考になるのが「OTC医薬品の比較と使い分け」です。この本は解熱鎮痛剤や総合感冒薬をはじめ、ドラッグストアで販売されるOTC医薬品の成分や使い方などがまとめられているので、お客さんの症状に合わせた薬を選ぶ時の参考になるでしょう。書籍内では薬の選び方がフローチャートでも紹介されているので、OTC医薬品を選ぶ目安がわかりやすいのもポイントです。
薬剤師の勉強におすすめのアプリ
最近では、薬剤師の勉強に使えるアプリも増えています。ここでは、薬剤師向けのアプリを4つ紹介します。勉強に使える時間が少ない方は、通勤や休憩時間などを利用してアプリで学んでみてはいかがでしょうか?
①ヤクチエシリーズ
ヤクチエシリーズは、累計ダウンロード数10万件を超える薬剤師に人気のアプリです。シリーズは「ヤクチエ添付文書」「ヤクチエ検査値」「ヤクチエ早見表」から構成されており、それぞれ病院や薬局に勤務する薬剤師の業務をサポートしてくれます。例えば「ヤクチエ添付文書」では、アプリを開けばスムーズに先発・後発品の薬価を比較することができます。また「ヤクチエ検査値」では血液データを早見することができるので、検査数値の正常値や異常値を検索したり勉強したりすることもしやすいです。いずれも薬剤師が業務中に使用することを想定してつくられているので、職場や家庭などの場所を問わずに使うことができます。
②薬トレ保険調剤
薬トレ保険調剤は、日本調剤株式会社が監修した調剤実務サポート用アプリです。薬トレ保険調剤は平成30年度の診療報酬改定に対応しているので、ブランクがある薬剤師にとっては最新の保険制度を復習する時にもおすすめです。無料会員登録をすると、保険調剤テキスト99ページ分を見ることができます。こちらのアプリは調剤トレーニングにも利用できるので、赤字で書かれた重要ポイントを消してテスト形式で学習することも可能です。アプリには検索機能もついているので、仕事で必要になった単語を検索すれば実務に活かしていくことができるでしょう
③治療薬ハンドブック
治療薬ハンドブックは、薬の特徴や処方のポイントについて知ることができるアプリです。治療薬ハンドブックでは、薬の適応・作用・副作用・禁忌などを閲覧することができます。治療薬ハンドブックにはバーコードリーダー機能が付いているので、アプリを起動し、医療用医薬品のバーコードにスマートフォンをかざせば簡単に薬剤の情報を収集することができます。アプリで薬剤を検索すると同一成分・薬価・薬効分のリストも表示されるので、添付文書を開くことなく薬を比較できる手軽さも人気です。
【サイト・動画・ブログなど】その他のおすすめの勉強方法
時には、ウェブサイトやブログなども良い学習ツールになります。最後に、薬剤師の自己学習に役立つおすすめのウェブサイトやブログを紹介しましょう。
① ProファーマCH
ProファーマCHは、無料で利用できる薬局薬剤師向けの学習支援サービスです。ProファーマCHの特徴は、日々の業務で使える知識やスキルを動画で学習できることです。短い動画では3分ほどの時間で視聴することができるので、仕事やプライベートで忙しい方も隙間時間を利用して学習することができるでしょう。また動画教材であることから、実際の仕事場面をイメージしながらスキルを身につけやすいのもポイントです。例えば、疑義紹介を解説する動画では、患者さんからの相談や医師とのやり取りをドラマ・マンガ風に再現することで、薬剤師の動きについて具体的なシミュレーションがしやすい内容となっています。
②薬剤師の脳みそ
薬剤師の脳みそは、薬局で管理薬剤師やエリアマネージャーを経験した薬剤師の管理者が運営しているブログです。SNSで話題になっている薬について記事を書くなど、企業のウェブサイトなどに比べると、現場の薬剤師により身近な内容をテーマにコンテンツを配信しているところが特徴です。ブログ内の記事はしっかりと出典元を明らかにしており、個人ブログではありますが根拠に基づいた情報を得ることができます。テキストだけではなくイラストや写真も数多く使われているので、堅い文章が苦手な薬剤師の方にも、気軽に閲覧できる教材として活用しやすいでしょう。
まとめ
薬剤師としてのスキルアップ方法や効率的な勉強法について説明してきました。働きはじめると仕事やプライベートが忙しく勉強する時間がとりづらいものですが、薬剤師は常に新しい知識を学び続けることが大切です。知識を正確に身につけることができれば、患者さんや他職種からも信頼される薬剤師として活躍できるでしょう。薬剤師のスキルアップ方法は多岐にわたるので、勤務先や生活スタイルによって取り組みやすい勉強法も変わってくるかもしれません。今回紹介した内容を参考にしながら、自分に合った勉強法を試してみてはいかがでしょうか。
キャリアアドバイザー 太田
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