病院や薬局勤務の薬剤師の平均年収は高い?低い?地域ごとの年収は?
目次
序文
薬剤師のなかには、自分の年収について気になっている人も多いでしょう。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(令和元年)」によると、薬剤師の平均年収は5,616,500円となっています。薬剤師の年収は、どのような労働条件で変わってくるのでしょうか?ここでは薬剤師の年収を確認しながら、収入を上げる方法についてお伝えしましょう。
男女別の薬剤師の平均年収
まず男女別に薬剤師の平均年収を見ると、次のような違いがあります。
薬剤師 | 平均年収 |
男性 | 6,006,000円 |
女性 | 5,356,600円 |
全国の薬剤師の人数は男女比が4:6となっていますが、平均年収は女性よりも男性のほうが多いです。これは、女性に比べると男性は職場の勤務年数や労働時間が長くなる傾向にあるため、キャリアを積むにつれて基本給が増えやすいからです。また男性の場合には管理職に昇進することで役職手当が支給される薬剤師が多いということも。基本給が増えたり役職手当が支給されたりすると賞与(ボーナス)の支給額も多くなるので、平均年収額は男性のほうが高くなっています。一方で女性の場合は、正社員以外にもパートやアルバイト・派遣薬剤師などの雇用形態で働く方も多いです。短時間勤務になるとプライベートの時間は増えますが、労働時間が短縮するため平均年収は低くなる傾向です。ただし、短時間勤務で働ける職場のなかには高時給の求人もあります。パート薬剤師の平均時給は2,367円ですが、医療機関や薬局のなかには時給3,000円を超える求人を出している職場も。時給額が多くなれば、短い労働時間・日数であっても年収額を増やすことが可能です。このように、薬剤師も勤務先や働き方によっては年収額を増やすことができるので、自分の業務量に見合った給与が支給される職場で働けると良いでしょう。
職場・年齢別の薬剤師の平均年収
①職場別の薬剤師の平均年収
次は、職場別に薬剤師の平均年収を見ていきましょう。薬剤師が勤務する代表的な職場には「病院」「保険薬局」「ドラッグストア」「製薬会社」がありますが、それぞれの平均年収は以下のようになります。
職場 | 平均年収(円) | |
病院 | 国立 | 5,893,209 |
公立 | 6,070,824 | |
民間 | 5,095,498 | |
保険薬局 | 一般薬剤師 | 5,017,136 |
管理薬剤師 | 7,645,578 | |
ドラッグストア | 6,104,000 | |
製薬会社 | 10,224,000 |
薬剤師の平均年収は、病院や保険薬局に比べるとドラッグストアや製薬会社で高くなる傾向があります。多くのドラッグストアでは慢性的に人手不足の状況です。しかしながら店舗で販売されるOTC医薬品(医師の処方を必要としない医薬品)のなかには、薬剤師がいなければ販売できない商品も数多くあるため、ドラッグストアでは給与を高く設定して薬剤師を積極的に採用する職場が増えています。また製薬会社では成果主義が徹底されているので、年齢や性別に関係なく実力のある薬剤師は年収も高くなりやすいです。特にMR(医薬情報担当者:営業職)は自分の営業成績次第で年収を増やすことができるため、高収入を目指す薬剤師には人気のある働き方となっています。一方で調剤薬局でも、昇進して管理薬剤師になることができれば700万円以上に年収をアップすることが期待できます。もちろん管理薬剤師になると業務内容も増えますが、月収は数万~数十万円変わってくるため経済的な余裕をつくりやすいです。薬剤師は勤務先によって年収が大きく異なるため、高収入を目指すのであれば幅広い分野の求人情報をチェックしてみましょう。
②年齢別の薬剤師の平均年収
薬剤師の平均年収を年齢別に見ると以下のようになります。
男性薬剤師
年齢 | 平均年収(円) |
20~24 | 3,567,600 |
25~29 | 4,963,900 |
30~34 | 5,810,800 |
35~39 | 6,536,100 |
40~44 | 6,520,500 |
45~49 | 6,960,900 |
50~54 | 7,192,200 |
55~59 | 7,299,400 |
60~64 | 6,072,000 |
65~69 | 5,446,100 |
70~ | 4,851,300 |
女性薬剤師
年齢 | 平均年収(円) |
20~24 | 3,991,200 |
25~29 | 4,641,300 |
30~34 | 5,076,800 |
35~39 | 5,423,200 |
40~44 | 5,786,700 |
45~49 | 6,014,800 |
50~54 | 6,709,400 |
55~59 | 6,191,400 |
60~64 | 5,241,200 |
65~69 | 6,004,400 |
70~ | 5,169,100 |
勤務先によっても変わってきますが、薬剤師の場合、男女ともに年齢があがるにつれて平均年収が増えていきます。ただし職場によっては、昇給額が低かったり昇進できなかったりするケースがあることに注意が必要です。なかでも病院や調剤薬局は診療報酬で事業所の収益が決まっていますし、役職の人数も少ないので、大幅な昇給が期待できない職場も多いです。例えば、ドラッグストアでは店長・管理薬剤師・エリアマネージャーなどの職位があるため、役職手当が支給されることで年収が増える可能性も高くなります。経験年数に伴って収入を増やしていくには、昇給率が高い勤務先を選ぶことが大切です。
地域別の薬剤師の平均年収
薬剤師は、働く地域によっても年収が変わります。以下は、各都道府県の薬剤師の平均年収です(全国平均は5,616,500円)。
地域 | 平均年収(円) | 地域 | 平均年収(円) | 地域 | 平均年収(円) |
北海道 | 5,663,200 | 石川 | 4,950,900 | 岡山 | 5,285,800 |
青森 | 6,198,400 | 福井 | 5,657,000 | 広島 | 5,720,000 |
岩手 | 4,940,500 | 山梨 | 5,115,300 | 山口 | 5,387,900 |
宮城 | 6,102,300 | 長野 | 6,895,100 | 徳島 | 4,440,200 |
秋田 | 6,187,900 | 岐阜 | 5,034,200 | 香川 | 5,476,300 |
山形 | 5,951,300 | 静岡 | 6,986,800 | 愛媛 | 4,637,200 |
福島 | 4,891,600 | 愛知 | 6,220,000 | 高知 | 6,426,500 |
茨城 | 5,80,7800 | 三重 | 6,006,000 | 福岡 | 5,305,100 |
栃木 | 5,206,900 | 滋賀 | 5,638,900 | 佐賀 | 5,225,500 |
群馬 | 4,834,900 | 京都 | 5,273,100 | 長崎 | 4,282,100 |
埼玉 | 5,211,800 | 大阪 | 5,588,900 | 熊本 | 5,371,900 |
千葉 | 5,374,900 | 兵庫 | 5,269,900 | 大分 | 4,646,100 |
東京 | 5,535,800 | 奈良 | 5,067,300 | 宮崎 | 5,697,400 |
神奈川 | 5,833,600 | 和歌山 | 5,629,000 | 鹿児島 | 5,367,500 |
新潟 | 4,471,700 | 鳥取 | 5,249,700 | 沖縄 | 5,304,700 |
富山 | 5,361,500 | 島根 | 6,258,200 |
薬剤師の平均年収がもっとも高いのは静岡県の6,986,800円で、もっとも低いのは長崎県の4,282,100円になります。このように、薬剤師は勤務する地域が違うと300万円近く年収が変わってきます。また薬剤師の平均年収が高い地域を見ると、青森県・秋田県・長野県・島根県などの地方都市が多いことも特徴です。これは、大都市圏に比べると地方都市のほうが薬剤師の人数が少ないため、高い給与を提示して薬剤師を採用したいと考える事業所が多いからです。さらに薬剤師の年収は、近隣都市間でも大きく異なります。例えば四国エリアのなかでは高知県の薬剤師の平均年収は6,426,500円であるのに対し、徳島県は4,440,200円です。エリアを変えると年収額も違ってくるので、求人を検索する時にはできるだけエリアを広げて探してみてはいかがでしょうか。
企業規模によって平均年収は異なる
薬剤師の平均年収は、企業規模によっても変わってきます。薬剤師の勤務先の企業規模を「1000人以上」「100~999人」「10~99人」に分けてみると、もっとも平均年収が高い企業規模は「10~99人」でした。
企業規模 | 平均年収 |
1000人以上 | 5,355,900 |
100~999人 | 5,485,300 |
10~99人 | 6,179,800 |
企業規模「10~99人」の職場に勤務する薬剤師は、ほかの企業規模に比べると平均年齢が高く、勤続年数の長いことが特徴です。そのため基本給や賞与額が高くなるので、「10~99人」の職場がもっとも平均年収が高くなっています。では、なぜ企業規模「10~99人」の職場の平均年収が高くなるのかというと、このような中小規模の調剤薬局やドラッグストアには店長やエリアマネージャーなどのさまざまな職位があり、各薬剤師は昇進をきっかけに年収がアップしやすいからです。企業規模「1000人以上」「100~999人」の事業所は、若手薬剤師に人気のある職場です。というのも、企業規模が大きくなるほど教育・研修体制が整っている職場が多いため、若手薬剤師にとっては専門職としてキャリアアップをしやすいから。つまり薬剤師は若手のうちに企業規模の大きい事業所でキャリアを積み、中堅からベテランになるにつれて高収入が期待できる中小規模の職場に転職をしていると考えられます。
直近10年の薬剤師の年収の推移
薬剤師の年収は、どのように変化しているのでしょうか?以下の表は、直近10年の薬剤師の平均年収です。表を見てわかるように、10年前に比べると40万円ほど年収がアップしています。
年 | 平均年収(円) |
令和元年 | 5,616,500 |
平成30年 | 5,435,900 |
平成29年 | 5,438,200 |
平成28年 | 5,149,000 |
平成27年 | 5,327,700 |
平成26年 | 5,311,700 |
平成25年 | 5,326,600 |
平成24年 | 5,281,900 |
平成23年 | 5,003,000 |
平成22年 | 5,181,900 |
しかしながら、今後も薬剤師の年収が順調にアップしていくとは考えにくいです。なぜなら多くの薬剤師は病院や調剤薬局に勤務しているため、収入が診療報酬に影響を受けるからです。近年、日本の医療保険財政は逼迫しています。2025年には後期高齢者(75歳以上)の人口が約2,200万、国民の4人に1人が75歳以上になると推測されています。2年ごとにおこなわれる診療報酬改定では診療報酬が引き下げられる傾向にあり、病院や調剤薬局の収益が減ることが予想されているのです。病院や調剤薬局の収益が減れば、当然、それらの職場に勤務する薬剤師の収入は少なくなります。10年前に比べて薬剤師の年収がアップしているからといって、必ずしも将来的に収入が増えるとは限りません。ですから薬剤師として働きながら、年収を増やすことができる方法について考えていくことが重要になります。
薬剤師は他の医療系業種よりも給与が高い?
実は、薬剤師は医療系業種のなかでも平均年収が高い職種です。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(令和元年)」で報告されている医療系業種のなかでは、薬剤師は4番目に平均年収が高い職種となっています。
順位 | 職種 | 平均年収(円) |
1 | 医師 | 11,692,300 |
2 | 獣医師 | 5,715,600 |
3 | 歯科医師 | 5,701,000 |
4 | 薬剤師 | 5,616,500 |
5 | 診療放射線・診療エックス線技師 | 5,019,500 |
6 | 看護師 | 4,829,100 |
7 | 臨床検査技師 | 4,601,900 |
8 | 理学療法士、作業療法士 | 4,096,400 |
9 | 准看護師 | 4,030,400 |
10 | 歯科技工士 | 3,847,900 |
11 | 歯科衛生士 | 3,704,800 |
12 | 栄養士 | 3,565,000 |
13 | 看護補助者 | 3,031,900 |
一般に医師を除いた医療系業種をコメディカルと呼びますが、コメディカルのなかでは薬剤師はもっとも年収が多い職種です。これは、薬剤師の業務内容に高い専門性が求められるためです。薬剤師は医師の処方に基づき、心身に作用する薬を適切に調剤する必要があります。状況によっては、医師の説明に加えて患者さんに服薬指導をおこないますし、処方内容に疑問がある場合には医師に報告する責務があります。このように薬剤師は専門性の高い職種であるため、ほかのコメディカルに比べると平均年収が高いのです。しかしながら、ここまで説明してきたように薬剤師と一口に言っても「職場」「地域」「企業規模」などの労働条件が変わると、年収が大きく異なってきます。そのため、薬剤師の勤務先によってはコメディカルのなかでも給与が少なくなってしまうということも。例えば大分県や新潟県の薬剤師の平均年収は470万円を下まわっていますから、平均で見ると診療放射線・診療エックス線技師や看護師のほうが年収は多くなっています。このことからも、薬剤師も高い年収を確保するには勤務先の労働条件が大切であることがわかるでしょう。また薬剤師とほかのコメディカルの違いは、養成課程にもあります。ほかのコメディカルの養成校は3年生または4年生であるのに対し、薬剤師の養成校は6年生です。つまり薬剤師は、コメディカルのなかでも資格を取得するためにより多くのお金を出資してきているのです。教育に多くのお金を費やしてきた分、働いてからはたくさんの収入を得たいと思うのは自然な考え方ではないでしょうか。もちろん、専門職が仕事をする理由は高い年収を得ることだけではありません。患者さんと密接にコミュニケーションがとれたり、好きな分野の研究に没頭しやすかったりすることも薬剤師の仕事のやりがいです。ですが、それに加えて業務量や業務負担に見合った報酬を得ることができれば、より仕事のモチベーションを維持しやすくなるのではないでしょうか。
薬剤師が年収を上げる方法
最後に薬剤師として働きながら年収を上げる方法についてお伝えしましょう。
①資格を取得する
薬剤師は、薬剤師免許のほかに取得すると手当が支給される資格があります。例えば「認定薬剤師」や「専門薬剤師」の資格を取得すると、質の高い薬剤師業務ができる人材として勤務先によって毎月5,000~10,000円の資格手当が支給されます。また「認定実務実習指導薬剤師」は薬学生の実習指導ができる資格であり、こちらも手当の支給が期待できます。
②昇進して役職手当をもらう
薬剤師としてキャリアを積んでいくと、勤務先で昇進できる可能性もあります。勤務先の規模や職位によっても変わってきますが、一般的には管理薬剤師で毎月3~5万円、ドラッグストアの店長やエリアマネージャーになると毎月5~10万円の役職手当が支給されるので、年収に換算すると数十~数百万円の年収アップができることも。
③良い給与条件の職場に転職する
薬剤師としてより多くの年収アップを目指すには、給与条件の良い職場に転職するのが良いでしょう。職場が違うと基本給が変動するので、月収や賞与の金額も大きく変わってきます。特に経験のある薬剤師の場合、新たな勤務先と労働条件の交渉もしやすいので、年収アップを目指しやすくなります。なかでも薬剤師を積極的に採用したがっている職場や地域では、ほかの事業所よりも高い給与条件の求人を出していることも多いです。
まとめ
薬剤師は、勤務先によって年収が変わってきます。「職場」「地域」「企業規模」などの労働条件が違ってくると、薬剤師の平均年収は数十~数百万円アップするということも。全国の薬剤師の平均年収は5,616,500円ですから、自分の年収額が下まわる時にはより良い給与条件の職場に転職を検討したほうが良いかもしれません。もちろん、専門職の仕事のやりがいは年収だけでは決まりません。顧客対応や研究などの側面に仕事のやりがいを感じる薬剤師も多いはず。ただし、なかには仕事のやりがいを感じづらく給与条件の合わない職場に勤務している方もいるでしょう。良い条件の職場は、求人を出してもすぐに内定者が決まってしまうものです。ですから、いまの職場の条件に不満を感じているようなら、年収アップを目指して転職を検討してみてはいかがでしょうか。
キャリアアドバイザー 高坂
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