病院薬剤師の平均年収を年齢別に紹介!国公立と民間で年収は変わる?
目次
序文
薬剤師のメジャーな働き口のひとつ“病院”ですが、みなさまは病院薬剤師についてどのようなイメージをお持ちでしょうか?薬剤師の場合、病院以外にも薬局やドラッグストア、企業など活躍できる場がたくさんありますが、実は就職先によって年収にかなりの差が生じることがあります。
そこでこちらのコラムでは、病院薬剤師の年収の実情や収入アップのコツなどについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
病院薬剤師の平均年収
ではさっそく病院薬剤師の平均年収についてみていきましょう。
病院薬剤師の初任給としては、月額20~25万円程度が相場です。年収でいうと300~350万円程度が平均になりますので、低いと感じる方が多いかもしれませんね。
その後徐々に収入は上がり、5~10年程度で年収400~450万円程度になります。
また役職などがつけばそれに応じて収入が上がるため、例えば薬剤師主任では500万円前後、薬剤師部長になると600~700万円程度まで年収が上がります。
上記はあくまで平均的な年収データのため、病院によってはもっと高い給与をもらえるところもありますが、同じ薬剤師職のドラッグストアや薬局と比べると平均年収は低めの傾向と言えるでしょう。しかし病院には給与以外の魅力がたくさんあります。医療現場でしか感じることのできないやりがいや経験を積むために病院薬剤師を志す方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方は、ぜひこちらのコラムを最後まで読んでいただき、病院薬剤師の収入について知識をつけていただくことをおすすめします!
国公立病院と民間病院で年収は変わる?
病院薬剤師には、「国公立病院」で働く“公務員薬剤師”と「民間病院」で働く“非公務員薬剤師”の2種類があります。どちらも病院勤務のため仕事内容はほとんど同じですが、それぞれ母体や運営方法などが異なることから給与水準や待遇面では様々な違いがあります。病院薬剤師を志望している方や、既に病院薬剤師として働いているが給与や待遇面で悩んでいるといった方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
それでは「国公立病院」と「民間病院」の給与や待遇面を比較するかたちで解説していきたいと思います。
■国公立病院
国公立病院の場合、薬剤師は公務員として雇用されるため初任給はどの病院でも一律の月20.8万円、年収約300万円になります。これは法律で定められた金額なので、法律が改定されない限り変わることはありません。
メリットとしては定期昇給があることで、スタートの初任給は低いものの毎年必ず月額6,000~7,000円ずつ年収が増えていきます。国公立病院に勤める薬剤師の平均年収は600万円以上と言われており、これは薬剤師業界の中でも比較的高い水準です。長く勤めればその分昇給額も大きくなるため、高めの水準になるようです。また役職次第では800万円を超えることも可能です。
ボーナスに関しては、年額80万円程度が安定して支給されると言われています。公務員であるため病院の経営状態などに応じてボーナスがカットされることはありません。
退職金についても35年以上勤めると1,500万円以上の支給があり、長く勤める甲斐がありますね。
また国公立病院では公務員としての雇用となるため安定性も大きなメリットとなっています。公務員薬剤師は原則として病院側の都合によって解雇されることがなく、ご本人の意思で定年まで勤めることができます。また福利厚生や手当類、残業代なども充実しており、長く堅実に働きたいという方にぴったりの職場となっています。
■民間病院
民間病院の場合、法律などによる規定が特にないため病院ごとに給与設定が異なります。初任給の相場は25万円程度で、年収では350万円程度になります。この収入額は、国公立病院の初任給と比べると月3~5万円程度、年50万円程度高いといえるでしょう。
しかし民間病院の注意すべき点は、定期昇給が定められていない点です。国公立病院ではコンスタントな定期昇給によって年々給与が上がりますが、民間病院の場合は昇給額の具体的な規定がなく、2年目以降の給与は上がりづらい傾向にあります。病院によっては全く昇給がないところもあります。そのため若手のうちは民間病院の薬剤師の方が給料が良くても、30代以降になると逆転してしまうことが多いようです。
ボーナスや退職金についても病院ごとに大きな差があります。病院の経営状態などによっても左右されることになるでしょう。
民間病院の場合、薬剤師主任や薬剤師部長等の役職がつくことで年収を大幅にあげることができますが、役職がつかない場合は400~500万円程度が頭打ちと言われています。そもそも役職はポストの数が少ないため、上がつかえている場合はなかなか就くことができません。ポストの数や役職に応じた年収額は病院にもよるため、目指すのであれば情報収集しておくのがおすすめです。
また待遇面や安定性についても病院によってかなり差があるのが実情です。近年医療費のひっ迫により約4割の病院が赤字で経営していると言われています。民間病院は国公立病院と比べて経営状態などの影響がもろにくるため、安定的に長く勤めたいという方は国公立病院の方が満足して働くことができるでしょう。逆に短い期間での勤務を考えているという方は、自分に合った民間病院を探してみるのもよいでしょう。
【年齢別】病院薬剤師の給与相場
病院薬剤師の平均年収を年齢別でみると、以下のような推移になっています。
■男性
20代 | 400~600万円 |
30代 | 500~700万円 |
40代 | 600~800万円 |
50代 | 800~1000万円 |
■女性
20代 | 400~500万円 |
30代 | 400~550万円 |
40代 | 500~600万円 |
50代 | 600~800万円 |
女性の場合、出産や育児などによって一時的に現場から離れたりパートで働いたりする人の割合が高いことから、男性の方が給与の平均額が高めの傾向にあります。しかし基本的に薬剤師職では収入に男女差が出づらく、女性がブランクなく正社員で勤務を続けた場合、男性と同じぐらいの収入を得ることができるでしょう。
また男女ともこの給与額は、調剤薬局やドラッグストアなどと比べると平均で50~100万円ずつ低い数字となっています。病院薬剤師は調剤薬局やドラッグストアと比べると業務量が多く、夜勤があったりなど心身ともに大変な仕事となっていますが、その割に収入額は低めとなってしまうことがお分かりいただけるかと思います。
病院薬剤師が給与を上げるためには、やはり何かしらの役職に就くことがおすすめですが、病院長や副委員長には基本的に医師や看護師が抜擢されるため、薬剤師がつけるポストは限られているのが現状です。そのため昇進しづらいともいえるでしょう。
病院薬剤師の年収が低い理由は?
ここまでお読みいただいた方は、調剤薬局やドラッグストアと比べて病院薬剤師の給与が低めの傾向にあることがお分かりいただけたかと思います。病院薬剤師は他の職場と比べて重労働な傾向にあるにもかかわらず、なぜ給与が低いのでしょうか?
①新卒に人気があるから
病院薬剤師の給与が低い理由のまず1つ目に挙げられるのが、“新卒に人気があるから”です。
薬学生が経験する薬局実習・病院実習を比較すると、病院という最先端の医療現場で医師や看護師と働けることに魅力を感じる学生が多く、待遇のわりに病院を志望する学生が多い傾向にあります。「新卒は大変でもやりがいを感じられる仕事をしたい」「チーム医療の中で専門性を活かせる仕事がしたい」という志をもった学生が多いのは嬉しいことですね。
そのため病院は新卒の学生を毎年多く採用できるため中途を募集する必要がなく、必然的に給与は低めになっています。
また新卒の市場では、病院薬剤師が人気であることから給与を上げなくても薬剤師を採用することができるため、初任給や昇給額が予め低く設定されています。もっとも医師や看護師はどこの病院でも不足しているため、医師や看護師の方が労働に対する給与が良い傾向にあることが多くあります。
②病院薬剤師は人件費を下げやすい
病院薬剤師の給与が低い理由の2つめとして“病院薬剤師の人件費を下げやすいから”が挙げられます。
医療費がかつてないほどにひっ迫している近年、病院はコスト削減を迫られています。とはいえ患者さんの治療にかかるコストを下げることはできないため、人件費を下げることが急務となっています。
そこでコストカットの対象とされやすいのが薬剤師なのです。医師や看護師がいないと診察や入院診療(病床稼働)を行えないのに対して、薬剤師は診療報酬を稼ぐ役割をほとんど担っていません。また前項でもお話した通り病院薬剤師は新卒に人気がありますから、医師や看護師とは異なりほとんど常に定員人数でシフトを回すことができています。
そのため病院において薬剤師の人件費はカットされやすく、少なめの定員人数と低めの給与が基準になっている状況なのです。
病院薬剤師のメリットは?
労働量に対して給与が低めな病院薬剤師ですが、薬剤師が病院で働くメリットとは一体何なのでしょうか?ここでは病院薬剤師のメリットについても簡単にご紹介していきます。
①臨床医療に携わることができる
医療現場で患者さんと向き合いながら働くことができるのは、薬局やドラッグストアにはない魅力です。病院では毎日医療が展開しているため、病棟業務などでは特に現場で働いているということを実感できるでしょう。実際に使用した薬剤の作用や副作用を自分の目で確認することもできますね。また抗がん剤などの薬物治療を行う患者さんから薬の専門家として頼られるなど、薬剤師としてのやりがいにもつながります。
②チーム医療の一員として働ける
病院では医師や看護師、栄養士などさまざまな医療従事者が協力しながら、日々患者さんのためにチーム医療を実践しています。そのため病院薬剤師も、薬物に関する知識を多職種に伝えるなど、チーム医療に参画していくことになります。薬剤師としての専門性を発揮している実感を持ちやすい点でメリットと言えそうです。また多職種とともに仕事をしていると自然と新しい知識や考え方を学ぶことにもなり、薬剤師としての成長にもつながるでしょう。
病院薬剤師の月収アップの方法
こちらのコラムでは病院薬剤師の年収が薬局やドラッグストアと比べて低めに設定されており、上がりづらいというネガティブな情報が多かったと思います。
そこで、病院薬剤師が年収をアップさせるにはどのような方法があるのでしょうか?ここでは3つご紹介していきます。
①資格を取得する
年収アップの手段の1つ目としてオススメなのが資格の取得です。
代表的なのは「認定薬剤師」や「専門薬剤師」などで、これらの資格を取得することで資格者のみができる仕事やポストを経験できるため、キャリアアップにつながりやすくなります。がん領域や感染領域、緩和領域などの認定薬剤師・専門薬剤師の資格は特に病院で活かしやすく、オススメの資格です。
たとえば感染領域の資格(感染制御認定薬剤師/感染制御専門薬剤師)であれば、院内の“ICT”とよばれる感染対策チームに所属し、他職種とともに病院全体の感染対策に携わることができます。
ステップとしては最初に「認定薬剤師」を取得し、次に「専門薬剤師」を取得するとよいでしょう。資格取得にあたっては、それぞれ資格取得に必要な研修単位や症例などを網羅し、試験に合格することが必要となるため、計画的に進めていくことをおすすめします。
②地方の病院に勤める
次にご紹介する年収アップ方法は、働く場所を地方に移すことです。家族がいる方などは事情により難しい場合もあると思いますが、地方で勤務することができる方にはオススメな手段のひとつです。
近年薬剤師の人数は飽和傾向にありますが、薬学部の大学が都市部に集中していることや薬剤師の市場で都市部が人気であることから、地方ではまだまだ薬剤師が不足しています。地方では高齢化も深刻なため、良い条件で働ける病院も多くあるでしょう。
とはいえ民間病院はそれぞれ待遇が異なります。給与やその他の条件をよく比較し、ご自身に合った病院を見つけるよう意識しましょう。また地方には経営状態が悪い病院もあるため、しっかりリサーチして就職を検討するよう注意が必要です。
③国公立病院への就職を目指す
病院薬剤師の中でも国公立病院は収入が高い傾向にあります。前述の通り毎年定額の昇給が必ずあり、ボーナスや退職金などの手当も充実していることなどから、病院薬剤師として安定的に高収入を得るためには国公立病院に勤めるのがよいでしょう。特に病院薬剤師として長く勤めたいという方は国公立病院の枠を狙うのがオススメです。
しかし国公立病院は公務員試験が必要なうえ、とても人気があります。採用のほとんどが新卒採用のため、新卒の方はしっかり準備して臨むようにしましょう。
また中途の方の場合、他院で一定のキャリアを積み、薬剤師としてレベルアップした状態で国公立病院への転職にチャレンジすることで、少しでも可能性を広げることができます。
まとめ
病院薬剤師の収入事情に関するこちらのコラムをお読みになっていかがでしたか?国公立病院と民間病院の比較、年齢別の比較など、さまざまな角度から病院薬剤師の収入に関する実情をご理解いただけたのではないでしょうか。
病院薬剤師は、収入面だけをみると良い面ばかりではありません。しかし病院における薬剤師の役割は大きく、薬剤師にとってやりがいや充実感のある仕事ができるという面では大きなメリットのある仕事です。
ですから病院で長く勤めたいと考えている薬剤師のみなさんは、できるだけ良い条件で働くことができるよう、早めから準備や対策をすすめていくことがオススメです!
キャリアアドバイザー 藤本
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