漢方薬 国産化を進める日本と逆輸入する中国

2019-03-01

日本における漢方薬の市場は右肩上がりに拡大しています。しかし、日本は漢方薬の原料となる生薬の8割を中国から輸入しており、価格高騰などで安定調達に課題を残しています。そこで、中国からの輸入に頼らずに生薬を国産化しようと、国内で様々な取り組みがなされています。一方、中国では海外の漢方薬の逆輸入がブームになっています。中国人観光客が日本で漢方薬を爆買いする逆転現象が起こっていますが、一体どのような背景があるのでしょうか。

進む生薬の国産化

生薬の国産化に向けて、日本各地で薬草栽培が広がりを見せています。高知県越知町は農業が盛んで、ピーマンやショウガなどの露地野菜、新高梨、ブンタンなどを生産してきましたが、約30年前、そこに薬草栽培が加わりました。四国全体に目を移すと、約430戸が加入する農事組合法人ヒューマンライフ土佐の生産額は年間約4億円にも上ります。その背景には漢方薬大手ツムラとの提携があり、ハーブ園などを活用した集客や地域活性化への期待も膨らんでいます。

日本特産農産物協会によると、2015年時点で全国43道府県の約5300戸が薬草栽培に取り組んでおり、この10年で栽培面積は1.4倍に増加しました。調達先を分散してリスクを減らすという意味でも、薬草栽培のさらなる広がりが期待されています。

また、様々な企業が生薬の国産化に取り組んでいます。製薬大手の武田薬品工業は漢方薬の主原料カンゾウの栽培研究に取り組み、国産化に成功しました。製紙大手の王子ホールディングスは製紙原料の植物研究で培った技術を応用し、国内産カンゾウの開発を進めています。

農林水産省も成長分野として生薬の国産化を後押ししており、官民一体となった挑戦が続いています。国産化による生薬の安定供給が実現すれば、漢方薬の普及はさらに加速していくでしょう。

日本の漢方薬を爆買いする中国人

中国人観光客による爆買いといえば化粧品や家電製品をイメージすると思いますが、ここ数年、漢方薬の爆買いが増えています。小林製薬は昨年、中国人からの高い人気によって、第2四半期および第3四半期の売上高が前年比5~6倍に増加しました。中国からのインバウンド需要によって、日本の漢方薬メーカーは軒並み利益を伸ばしています。

では、生薬のほとんどを中国から輸入する日本で、なぜ彼らは漢方薬を買うのでしょうか。その理由は、中国と日本など海外の品質基準の違いにあります。中国では漢方薬の品質基準が整備されておらず、農薬残留物や重金属含量の基準値をクリアできずに、海外に輸出できないことが珍しくありません。そのため、中国人は安全で高品質な日本の漢方薬をわざわざ買い付けるのです。

漢方薬といえば中国をイメージする方も多いと思いますが、日本は世界の漢方薬市場において80~90%という圧倒的なシェアを誇ってます。日本が漢方薬の原料となる生薬を国産化し、高い品質をキープすることができれば、世界の漢方薬市場における存在感をさらに高めていけるでしょう。

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