病院薬剤師が転職する理由とは?

序文

一般業界と比べ、薬剤師は資格職であることからも転職する人が多い職種です。薬剤師と一言で言っても、勤務先は調剤薬局、ドラッグストア、病院、製薬企業など様々な業種がありますが、この記事では病院薬剤師の転職事情について解説していきたいと思います。

薬剤師が転職する理由

病院で勤める薬剤師が転職する理由は様々ありますが、大きく分けて「給与や休日などの労働条件」「人間関係や忙しさなどの労働環境」「ライフスタイルの変化」「やりたい仕事ができないから」の4つが挙げられます。では、それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。

(1)労働条件を改善するための転職

労働条件とは、給与や手当、休暇日数などのことを指します。病院の労働条件は薬局やドラッグストアと比べると全体的に低い傾向にあるため、「労働条件を良くしたい」という理由で転職する薬剤師はとても多いです。

特に給与面では不満を抱える薬剤師が多くいます。一般職(役職なし)の平均年収で比較すると、調剤薬局で約450~550万円、ドラッグストアで約500~600万円であるのに対して病院では約380万円と、かなり低い水準であることが分かります。

薬剤師5年目ぐらいになると、調剤薬局やドラッグストアでは管理薬剤師等を任され、それに伴い給与もアップしていきます。一方病院ではそのような昇給のチャンスはとても少なく、昇給に関してもあまり期待できないのが現実です。

また病院は薬剤師以外にも医師や看護師、その他コメディカルの職員が多くいるため、住宅手当や社宅制度も行き届いていないケースが多く、一人暮らしの場合は更に経済的な負担が大きく、転職を決意する方が多くいます。

また、休みが少ない、有休がとりづらい、という理由で転職する方もいます。年間休暇日数は100日~120日程度と病院によってかなり差があるため、休みが少ない病院で勤めている方は必然的に体力的な負担が大きくなります。

また病院は人手不足で回しているケースが多く、有給休暇が自由にとれないところも多いのが現実です。病院によって差はあるものの、プライベートの予定や家庭との両立などを考慮して、もっと休みを取りやすい職場への転職を検討する薬剤師の方は意外と多いのです。

(2)労働環境を改善するための転職

労働環境とは、職場の雰囲気や人間関係、残業などの働きやすさのことを指します。病院においてこのような労働環境に悩む薬剤師は非常に多く、転職理由の中でも上位にランクインしています。

まず病院は24時間医療が展開している現場のため、急変や急患などに都度対応していく必要があります。労働者の都合で時間を調整できない、という特徴があり、残業が長期化しやすい傾向にあります。病院により差はあるものの残業のない病院は少なく、夜中に帰宅することが多いという病院もあるようです。

また慢性的に人手不足な病院は非常に多いため、忙しさを訴える薬剤師はとても多いです。忙しい現場は殺伐としやすいため人間関係の悩みも多く、このような労働環境全般を改善することを目的に転職する方は後を絶ちません。

(3)ライフスタイルの変化による転職

ライフスタイルの変化により転職する方が多いのも病院の特徴です。

結婚や出産などライフスタイルに変化があった際、薬局やドラッグストアと比べて勤務を続けづらい傾向にあるという声が多いため、その理由を解説していきます。

まず結婚などで転居を伴う場合、薬局やドラッグストアでは複数店舗を持っているケースが多く、場所により店舗を異動して働き続けられる可能性があります。一方病院の場合、複数分院を構えているケースは少なく、あってもその数は多くありません。そのためライフスタイルの変化により転居を行う場合、転職せざるを得ない方は多い傾向にあります。

また結婚や出産を機に、ワークライフバランスをとるために転職する方も多くいます。薬局やドラッグストアでは多くの場合日中の勤務がメインであり、特に調剤薬局では18時~20時ごろには閉局します。帰宅時間もある程度予測がつくため、家庭と両立しやすい環境といえるでしょう。一方病院では、月に数回の夜勤や日々の残業などにより生活リズムが乱れやすく、特に女性の場合は家事や子育てを行う上でネックになってしまうケースが多いでしょう。現場が忙しく時短勤務を申請しづらいなど、私生活との両立が図りづらい傾向にあるようです。

(4)病院でやりたい仕事ができないことが理由の転職

病院に就職する方は、元々志の高い方が多い傾向にあります。「低賃金、重労働だけど病院でしか学べないことを学びたい」「薬剤師としてチーム医療に貢献したい」という考えを持っている方がとても多いです。しかし実際に病院に就職すると、想像していたようなやりがいを感じることができず、モチベーションが維持できなくなってしまうケースが非常に多いです。

やりたい仕事ができないことを理由に転職に至る原因は、“病院で働く=病棟で服薬指導を行う”というイメージを持って就職する方がとても多いことにあるでしょう。しかし実際に病院に就職すると病棟業務以外にも調剤業務や抗がん剤業務など様々な業務があり、病棟業務に携われる薬剤師の人数はそれほど多くないのです。また新卒で入社していきなり病棟担当にはなれないため、多くの場合病棟に配属してもらえるまでに数年かかります。その間「こんなはずではなかった…」「モチベーションを維持できない」と感じる薬剤師は多く、モチベーションを維持できないことから早期の退職に繋がりやすくなっています。

また、実際に病棟業務に携わってからもやりがいを感じられないケースがあります。病棟担当といっても日々の業務に追われるため、実際に患者さんのもとで服薬指導を行える時間は限られているようです。「患者さんと継続的に関われると思っていたのに、実際はあまり関われない」など、当初抱いていたイメージとのギャップが大きいと感じる方が多い傾向にあります。

このような理由から、激務・低賃金の中やりがいを求めて病院に就職した薬剤師にとって「やりたい仕事ができない」ということが転職に繋がっているケースは非常に多いといえるでしょう。

転職する際に伝える退職理由

ここで実際に病院薬剤師が転職する際、病院側に伝える退職理由や伝え方のポイントについて、解説していきます。退職理由の伝え方次第で円満に退職することができるので、ぜひ参考にしてみてください。

(1)退職理由を本音で伝えるべきケース

退職理由を伝える際、本音で伝えたほうが良いケースと、言い方を工夫すべきケースがあります。

本音で伝えるケースには以下のようなものがあります。

①ライフイベント(結婚や出産、育児、転居、親の介護など)のため

②自身の体調不良のため

③キャリアチェンジ、やりたいことがある

①のようなやむを得ない家庭の事情や、②のように退職以外の選択肢がない場合、病院側は退職を認めざるを得ません。そのため退職理由はストレートに伝えるようにしましょう。下手にごまかしたりすると、かえってトラブルの元になることもあるため本音で丁寧に伝えるようにしましょう。

また①のケースでは、時短勤務や一時的な休職などを勧められるケースもあるでしょう。それに応じるかどうかはご本人次第ですが、自分の意思をしっかりもつことが重要です。本気で退職を望む場合は、早めにしっかりと断るようにしましょう。退職しない可能性を示すことで相手に期待させてしまい、退職時にわだかまりが残るケースもあるため注意が必要です。

また③のように、自分自身のキャリアを考えたうえでの退職理由は本音で伝えると良いでしょう。ここでポイントになるのが、今後のビジョンや思い描くキャリア、挑戦したいことについて、上司にしっかりと伝えることです。くれぐれも適当に伝えないように注意しましょう。

上司に意欲が伝わり、きちんと納得してもらうことができれば、今後のキャリア形成を応援してもらうことができたり、場合によってはアドバイスをもらえたりすることもあるでしょう。円満退社にも繋がります。

しかしこのケースでは、職場の人員不足が深刻な場合に引き止められてしまう可能性も一定生じてしまいます。「○○の部署に異動させてあげる」「○○をやった方が薬剤師として成長できる」等、新たな条件提示や価値観の誘導などが行われることもあります。そのような場合は、自分の意思をしっかり持つことが大切です。自分のキャリア形成を考えたうえで退職以外の選択肢がないことを、誠意をもって伝えるようにしましょう。

(2)退職理由をストレートに伝えないほうが良いケース

退職理由をストレートに伝えるべきではないケースには以下のようなものがあります。

①労働環境や労働条件を変えたい

②やりがいを感じられない

①②のケースでは、職場に対するネガティブな内容のため退職理由をストレートに伝えるべきではありません。職場の労働環境や労働条件などに関する不満を上司に伝えてしまうと、悪い印象を与えてしまうため円満に退職することが難しくなってしまいます。また自分が退職した後もその職場で働き続ける人たちがいることにも配慮する必要があります。

給与や休みなどの労働条件を理由とした退職では、条件緩和を提示されるケースが非常に多いのです。「給与を○○円増額する」「年間休日を○○日に増やす」などの条件交渉が行われますが、他の職員を出し抜いての条件交渉のためあまり期待はできませんし、働きづらい環境に追い込まれてしまうこともあります。

このような理由があるため、①②のようなケースでは退職理由を本音で伝えるのではなく、第二の理由や建前の理由を伝えるようにしましょう。

建前の理由の伝え方としてオススメなのは、本音の理由を前向きに変えて伝える方法です。

(例)

“やりがいを感じられないため” → “○○に挑戦したい”

このように、ネガティブな内容をポジティブな理由に変えて伝えることで、職場との関係性を悪化させずに退職することができるでしょう。

薬剤師面接で転職理由を伝える際の注意点

前項では、病院薬剤師の職場への退職理由の伝え方について解説しましたが、ここでは転職面接における転職理由の伝え方について、注意点を解説していきます。病院からの転職ならではの注意点もあるので、ぜひ参考にしてみてください。

(1)前の職場の悪口を言わない

転職面接において“前の職場の悪口を言わない”ことは最も重要です。特に病院薬剤師の場合、給与や残業等の労働条件や労働環境を理由に転職に至る方が多いので、素直に伝え過ぎないよう十分に注意しましょう。

転職面接では、“長く働いてくれる人材であるか”という点が一つの採用基準になっています。退職理由として労働条件等のミスマッチを挙げると、不満を持ちやすい人と勘違いされ、「また辞めてしまうのでは?」と思われてしまう可能性があります。転職理由を伝える際は、なるべく別の要素を考えて、可能な限りポジティブな理由を伝えるようにすると良いでしょう。

(2)人間関係のトラブルで転職に至った場合、トラブルについて極力触れない

病院薬剤師には人間関係の不満やトラブルが理由で転職する方が多くいますが、可能な限り触れない方が良いでしょう。

新卒・中途共に“一緒に働きたい人材であるか”という点が一つの採用基準になっています。転職理由をとして人間関係でのトラブルがあったことを伝えると、薬剤師はチームワークが重要で多職種との連携などもあるため、「またトラブルを起こすのではないか?」と思われてしまうかもしれません。少なくとも応募者にとってプラスに働くことはないため、どんなに相手に問題があったとしても、何か特別な事情がある場合を除いては伝えないでおきましょう。

(3)他業界への転職では、そこで働きたい意欲や理由を示す

今回の転職を機に薬局やドラッグストアなど、心機一転別の業界で働きたいという方は多いことでしょう。ここで大切になるのが、“なぜその業界で働きたいのか”を伝えることです。

前の業界では叶わなかったことを実現するため、○○業界にとても関心がある、など様々な理由があると思いますが、それをしっかりアピールすることが重要です。

ここでポイントになるのが、“低姿勢で伝える”ことです。病院ではベテランとして働いていたかもしれませんが、新しい業界では一から学ぶことも多いはずです。そのことをしっかり認識し、新しい業界に臨む理由やこれから頑張りたいことについて意欲的かつ謙虚に伝えましょう。

まとめ

病院薬剤師の転職理由についての記事をご覧になってみて、いかがでしたか?

病院は労働環境や労働条件の面から、離職率が高い業界の一つです。病院を転職する際の理由は様々ですが、ネガティブな内容の転職理由の場合、それを元の職場や転職面接で伝える際は注意すべき点やポイントがあることがお分かりいただけたと思います。

とは言っても、初めて転職する方や他業界へ転職する方は不安も多いと思います。専門のコンサルタントにご相談いただけると、円満退社の方法や面接対策など、より具体的にアドバイスに乗ってもらうことができるので、ぜひご活用ください!

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