薬剤師は海外への転職は難しい?海外で転職するための方法
目次
まずは、海外で働くメリットを知ろう
薬剤師免許を取得したら国内ではなく、海外での勤務を希望する方も多くなってきました。海外勤務では国際的な医療の知見が身につくだけでなく、国内では経験できないことも多く魅力的にあふれていますよね。
薬剤師が海外で働くことで得られるメリットは多くあります。その中でもとくに大きなメリットは以下の3つです。
・他の言語に触れることで語学力が身につく
・異文化で生活することでコミュニケーション能力が高まる
・日本では知り得ない国際的な医療の知見が身につく
一つずつ解説していきたいと思います。
①他の言語に触れることで語学力が身につく
海外での勤務経験は語学力アップに役立ちます。
日本語が使われない環境に身を置くことによって、半ば強制的に語学力を高めていくことができるでしょう。
今後日本は少子高齢化が進み、国内の総人口も減ってくることが確実視されています。
そのような状況から訪日外国人や移民による外国人労働者が増えていく可能性は非常に高いと言えます。
実際の臨床や実務で使える語学力があると、訪日外国人や移民による外国人労働者への服薬指導も可能です。現在、実務レベルの外国語で指導ができる薬剤師は少ないと言われているため、活躍の場がますます広がりますね。
海外での勤務経験を通して語学力を身につけることは、日本に戻ってきたときにも大いに役に立ちます。
②異文化で生活することでコミュニケーション能力が高まる
日本を離れて海外で働くことは決して簡単なことではありません。異なった文化で働くために高いコミュニケーション能力も必要になってくるでしょう。
職場の人間関係を円滑にするように努めることでコミュニケーション能力も日々高まっていくでしょう。
海外で身に着けたコミュニケーション能力は、日本に帰ってきてからもさまざまな場面で役に立ちます。
③日本では知り得ない国際的な医療の知見が身につく
海外で働くことによって、日本では感じることのできない文化や生活スタイルの違いを経験することができます。
医療サービスは文化や生活スタイルの違いと密接に関係しているため、これらの違いを理解することは重要です。
国内で外国人労働者が多くなっていく上で、さまざまな価値観を経験しておくことは時間がたつにつれてプラスに働くでしょう。
また、海外の経験を通して日本の医療もこれまでと違った視点から見ることができるかもしれません。
でも、薬剤師は海外で働くことが難しい!
多くのメリットがある薬剤師の海外勤務ですが、一方でハードルが高いことでも知られています。
とくに
・資格取得
・必要な語学力
・就労ビザ
については事前に確認しておいた方が良いでしょう。これらについて詳しく解説していきます。
①資格取得
ほとんどの国では日本の薬剤師免許は通用しません。国によって教育レベルも違えば、薬事法も異なるため、移住する国で再び薬剤師免許を取り直さなくてはなりません。
また、国によっては外国人には受験資格すら与えられていないケースもあります。そのため資格取得のハードルは高いと言えますね。
②必要な語学力
海外勤務をことにより語学力は高まりますが、事前にある程度の語学力を身につけておく必要があります。
臨床の現場で働くために実務レベルの語学力は必須であり、一定の基準が設けられていることがほとんどです。
患者さんやスタッフとのコミュニケーションだけでなく、会議や打ち合わせなどもあるため、「どの程度円滑に話せるか」も面接官に評価されます。
TOEICやTOEFLで評価されることが多いため、海外勤務を考えている場合は早めに語学力を磨いておくと良いでしょう。
③就労ビザ
就労ビザ(在留資格)とは、「入国して、働いても問題ありません」ということを示す証明書のことです。
海外勤務を希望する場合、就労ビザを取得する必要があります。しかし実は、この就労ビザは申請すれば必ず通るといったものではありません。
基本的には雇用先が決まっていないと申請が通らないケースが多いのです。
そのため就労ビザを取得するためには、「移住先の薬剤師免許」「現場で使える語学力」「雇用先」この3点が確保されている必要があります。
ちなみに、移住先の薬剤師免許を取得するためには海外へ滞在することになります。その際に必要なのは「就学ビザ」です。
間違えないように注意しましょう。
例外もあります
ここまで海外勤務のメリットと勤務までのハードルの高さを解説してきました。
「海外で勤務したいけど、現地で薬剤師免許を取得するのは難しい…」と感じている方も多いはず。
では移住先で薬剤師免許を取得しなければ、海外で働くことはできないのでしょうか?
実はタイやシンガポールなど、アジア圏の一部の国では現地の資格が不要なケースもあります。
また、薬剤師としてではなく「薬剤師免許を活かした別の職種」であれば勤務可能であるケースや、海外ボランティアという選択肢もあります。
シチュエーション別に解説していきましょう。
①タイやシンガポールで勤務する
先述したようにタイやシンガポールでは、現地の薬剤師免許を取り直すことなく働くことも可能です。
働く先の多くは、日系の病院・クリニックになります。例えばタイ(バンコク)には日本人街があり、多くの日本人駐在員が働いています。
そのため、日本人が通うための病院やクリニックも用意されているのです。
日本人が通う病院やクリニックであるため現地の薬剤師免許は必要ありませんし、英語やタイ語も不要であるという条件すらあります。
同じような理由でシンガポールでも日系の病院やクリニックから求人が出されることもあります。
しかし、日系の病院やクリニックから求人が出されることは比較的稀であるため、本気で探すのであれば常に最新の情報をチェックしておく必要があります。
②薬剤師免許を活かした別の職種で勤務する
薬剤師に限らず、海外勤務してみたいという方は資格や経験を生かした別の職種にチャレンジするのはいかがでしょうか。
つまり医療機関ではなく、一般企業での勤務です。
例えば薬を扱う通販サイトへの転職がこれに当てはまります。
タイで売られている薬の個人輸入を代行し、日本へ販売する企業などが薬剤師を募集することがあります。完全に合法的であり、安全性に問題ない薬を扱うので心配ありません。実際に国内で利用する方は意外と多いのです。
こうした海外の企業には日本人の薬剤師に一定の需要があります。医療に携わるわけではなく、実際の業務はウェブサイト掲載商品の説明文書作成・企画・メルマガの作成・商品調査などです。
現地での薬剤師免許が不要であるため、海外勤務へのハードルはかなり下がるといえるでしょう。。
③海外ボランティアで活動する
海外で薬剤師の活動をしたいと考えたときに選択肢に上がることも多い海外ボランティア。
代表的なのは青年海外協力隊です。様々な経験ができるため魅力的な活動ですが、海外ボランティアは覚悟も必要であることを知っておく必要があります。
海外青年協力隊は一定の語学力や薬剤師の経験があれば審査を通過することができます。
しかし活動の場所は基本的に発展途上国です。組織の性質上ある程度発展している国で活動することは難しく、例えばタイやシンガポールなどは勤務場所からは除外されることがほとんどです。
発展途上国では道路や水道、鉄道、電気といったインフラが整備されていない国が多いため、日本のように快適な生活は約束されません。
また生活に必要なものは支給され、物価も安いため生活に困ることはありませんが、年収100〜150万円が相場と言われています。
最低限の生活はできますが、貯金することは難しいでしょう。
海外ボランティアは一般的な医療現場では経験できないことが多く魅力的な部分も多いです。しかし、インフラが整備されていない国で生活することになるため、それなりの覚悟が必要なのも事実。
また現地の言葉が英語でない可能性もあり、コミュニケーションに苦労してしまう可能性もあります。
これらの事実を理解した上で海外ボランティアに申し込むかを検討するようにしましょう。
条件をクリアすれば欧米で働ける!
ここからは薬剤師が海外で勤務するための必須条件を主要な国別で見ていきましょう。
ここでは以下の3か国についてご紹介します。
・アメリカ
・カナダ
・オーストラリア
①アメリカ
アメリカで薬剤師として勤務するためには、現地の薬剤師免許を取得する必要があります。
アメリカの薬剤師免許を取得する方法は大きくわけて以下の2通りです。
1つ目はFPGEEの認定証を取得し、インターン後、国家試験に合格する方法。FPGEEとは外国人向け薬学試験のことで、インターンで臨床研修を受けるための要件になります。
2つ目はPharm.Dを卒業し、インターン後、国家試験に合格する方法。Pharm.Dは日本でいう大学院のことであり、4年生大学でPrerequisiteという必須科目修了後、入学することができます。
どの道のりを辿ろうとも実務レベルの語学力は必須です。また、アメリカは州ごとに試験を行うので、勤務を希望する州の情報も事前に把握する必要があります。
まとめると、アメリカで薬剤師として勤務するためにはアメリカの薬剤師免許・語学力・就労ビザが必要です。
②カナダ
続いてカナダで薬剤師として勤務するために必要な条件を解説します。
カナダの場合もやはり現地の薬剤師免許を取得しなければ勤務することができません。また、アメリカと違う点は国家資格と州の試験の両方に合格しなければいけないということ。
州ごとに法律が異なるため、実際に勤務予定のある地域での資格が必要なのです。
受験資格を得るには2つのケースがあります。
一つは日本の薬剤師免許を保持しているケース(書類審査にて学位・成績・語学力の証明ができた場合のみ)。
もう一つはカナダの大学(現在10の大学が認められている)において薬学士、もしくは薬学博士課程を修了したケースです。
講義と実技研修を受けた後、国家試験に合格すれば州の薬剤師免許の受験資格を取得することができます。その後、州の試験にも合格すれば晴れて現地薬剤師免許を取得できる仕組みです。
まとめると、カナダで薬剤師として活動するためには現地の薬剤師免許・実務レベルの語学力(英語またはフランス語能力の証明が試験で求められる)・就労ビザが必要です。
③オーストラリア
オーストラリアでも現地の薬剤師免許が必須です。使用する医薬品や法律も異なるため、日本で資格を持っていたとしても学び直す必要があります。
日本で薬剤師免許を取得している方は、まずIELTSなどの外国人用英語力試験を受験します。
その後、薬学大学と大学院の修士課程に入学。卒業後に州の研修を9ヶ月以上受け、薬剤師試験に合格すると資格を取得することができます。
ちなみにオーストラリアではカナダ同様、州によって法律が異なるため働く地域で試験を受けるのが一般的。しかしオーストラリアでは、州で資格を取得しても、オーストラリア全土で勤務が可能になります。
まとめるとオーストラリアでも現地の薬剤師免許・実務レベルの語学力・就労ビザが必須の条件となっています。
まとめ
薬剤師が海外で勤務するためにはほとんどの場合、現地での薬剤師免許・実務レベルの語学力・就労ビザが最低でも必要です。
しかし、アジア圏の一部の地域においては日本の薬剤師免許のまま勤務することも可能です。日本人向けの病院やクリニックが存在しているため、わざわざ現地の資格を取り直す必要がないからです。
また、薬剤師の業務にこだわらない場合は通販会社などに勤務するという選択肢もあります。しかし、求人の数が少ないのでこまめにチェックし、案件が出てきた際にはできるだけ早く応募することが必要です。
ヤクマッチ薬剤師は、薬剤師の転職に特化しているだけでなく、薬剤師免許を持ったスタッフも多数在籍しているため、海外勤務を希望する場合でも職場探しをしっかりとサポートすることができます。
「海外勤務について知りたい!」と思っている方はぜひ、お問い合わせください。
キャリアアドバイザー 佐伯
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